沖のイカ釣り

このことを知る人は少ないのでは?と思い、ここに書きます。

遠洋漁船マグロ漁船に乗り、沖で漁をしているときの楽しみは、漁が終わった後のイカ釣り。
漁をすることを操業と言う。マグロ延縄の操業は朝暗いウチから縄を入れはじめ、縄を取り込み終わるのは深夜。もちろん、縄の長さや、魚のとれ具合によるのですが、普通はそんな感じ。
これもまた船により違いはあるものの、何日かに1日は朝の縄入れをしなくてイイ日がある。そんな日の前夜にやるのが楽しみのイカ釣り。
大洋のど真ん中というと、魚がウジャウジャ居てパラダイスと思っている人もいるかもしれませんが、実は生物相は貧困で、沿岸の比ではない。ホント魚は薄い。釣れたマグロの胃袋の中を見てみても、皆さんが思っているようなサバやアジが入っているなってことは稀。多くは、小さなイワシみたいなのか、エビ類、小イカとかがかろうじて入っているくらい。そんな中貧相な生物相の中でも、したたかにいるのがイカ。沖の漁師が言う、バカイカ、アカイカ、アオリと呼ばれるイカが代表。アオリは沿岸のアオリイカとは違い、ソデイカのこと。そんなイカを狙う。

仕掛けは、昔は手釣りだったが、今ではロッド&リール(シイラやジギングタックル)に、リーダーを付け、その先に水中ライト。その先のまたリーダーを付け、”シュッテ”と呼ばれるイカ針をセットする。餌にはマグロ用のムロアジやサバを使ったり、釣れてきた小さめのイカを使ったりする。餌をシュッテに通し、スナップでリーダーに連結する。それを、50m~200m出しイカのアタリを待つ。水中ライトの色は、青がイイという人もいれば緑がイイ、赤がイイ、全部光るレインボーがイイ、はたまた紫外線がイイという人もいる。自分の経験から言うと、青または紫外線がイイのではと思う。青は、水中で一番遠くまで届く色、つまり広範囲のイカにアピールできるからではないかと考えている。
操業を終えたマグロ漁船は、夜はエンジンを切り、波間に漂わせる。動力を失った船は、波に対して船体を横にし、流される。潮上側に釣り座をとり、糸を出し、イカの泳層を考えながらラインを出していく。漂流中の船は他船から目立つようにたいがい煌煌とライトを付けている。それに小魚が寄り、それを狙ってイカも浮いてくる。時に水面まで出てきて小魚をおそう。それはたいがいバカイカ。アオリはやや浅い層を、アカイカは深い層を泳いでいるようだ。アオリは大きくなると20キロ、アカイカも10キロくらいにまではなる。
イカのアタリは、特にバカイカは、はじめ小さくジワジワと来る。たぶん抱きついて、軽く引っ張っているのだと思う。その時に合わせても乗らないことが多い。しばらくすると、引き込みが大きくなる。そういう時に、バスで言うスイープフッキングを行う。なるべくストロークをとり、グ~~~~っと針を食い込ませるつもりでやる。ちなみにこのとき使うシュッテの針にはカエシが付いている。漁師によると、「デカイのは引き寄せられながら触手で針をのけようとするので、カエシがないとバレる」らしい。
大きなアカイカや、アオリは、一気に持って行くこともある。気を抜いていると竿ごと海に取られる。そして暫くはイカっぽいグッグという引きではなく、ガ~~~~~っと走る。20mも走られることもある。それをやり過ごし、何度かやりとりをすると、船縁まで寄ってくる。デカイイカが船のライトに浮かび上がるとコーフンMAXに達する。
釣り上げたイカは速攻で墨袋を抜く。それをしないとデッキ中を真っ黒にされてしまう。それが終わると、解体し、冷凍し日本に持ち帰る。食べるとおいしく、もの凄い大きさと肉厚なので、初めて見る人の度肝を抜くには最適だ。

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この仕掛けには、時折外道として魚が食ってくる。多くは漁師の言う「ヨガラス」、クロタチカマスや、ヨシキリザメ。サメ類は今、国際条約で捕獲が禁止されているので、デッキに上げることができない。食わせてしまったら、寄せてきてリーダーを切るか、何とか外れてくれることを祈るしかない。うまく外れたとしても、サメの顎力で、堅いステンレス製のシュッテはグニャグニャに曲げられてします。やっかいな存在だが、引きを楽しむと割り切れば楽しい。

最近ではイカ釣りにジグを取り入れている人もいる。一時試してみた。ただ、普通にイカジグとしているジグの想定はスルメイカ等、大きくて2キロまでだろうと思う。針(カンナ)のサイズもそれ用の大きさだ。ただ沖で相手にするのは20キロ、それなりにしないといけない。いろいろとサイトを巡ると、ソデイカをジグで狙っている人もいることがわかった。それは、普通のジグに「タルフック」と呼ばれるタルイカ(ソデイカ)用のフックを装着していた。

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タルフックは調べるともう製造中止になっていて、入手は困難だと言うことがわかった。知り合いの釣具屋さんに問い合わせてもダメとのことであった。ある日、オークションサイトを見ていたら、たまたまタルフックが出ていた。そしてうまく落札できた。落札後のやりとりで、出品者はもう1本持っていることが判り、それも譲ってもらった。タルフックを持って乗船し、ある日使ってみた。200gの夜光のジグに付け、100mほど沈めたら、ラインが急にフケた。慌てて合わせると、グッと乗ってイカの引きが来た。取り込めたのは普通サイズのアカイカ。

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でも第1投のフォールから食ってくるとはなかなか幸先が良い。次の1投、200mほど沈め、大きなストロークでしゃくりながら上げてくると、ガツガツというアタリがあり、合わせると、フッと軽くなった。巻き上げると、ジグが切れていた。たぶんサメに食われたのだろう。しかし、ジグが有効であることは判った。別のジグにタルフックを付け、また投入した。ガツガツとアタリがあり、またブレイク。3投で2個のタルフックが無くなり、釣れたのはイカ1杯だけ。ただ、ジグが思っていた以上に使えることもわかった。その後はタルフックの代わりにルアー用トレブルフックを2個付けたものを使ったりしたが、なかなか乗らないのが続き、ついにはジグを諦めた。それ以降、タルフックには巡り合っていない。

 

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