並木さんと初めて会ったこと

創刊よりずっと愛読しているBASSER誌。その誌上で「バスプロ並木の出張講習」という企画があり、クラブで応募してみた。数日後編集部から採用の連絡があり、思ってもみなかったことが実現した。それからはクラブで並木さんの歓迎内容を検討し、当日に臨んだ。
7月某日、高知空港に並木さんの乗った便が到着した。クラブ総出で、横断幕を用意して今か今かと出てくるのを待っていた。到着ロビーに人があふれ、やがて引けていった。ついにはぱらぱらとなったモノの、並木さんは出てこなかった。ややって、雑誌等で見かけた姿が見えた。聞けば、前日は徹夜で原稿を書いていたらしい。便乗してすぐに気を失い、気がついたのは乗務員に起こされたときだった。とのことで、最後に降りてきた。
それでも横断幕をみて「嬉しい」と言ってくれ、緊張気味のクラブ員に、1人1人丁寧に言葉を掛け、握手をしてくれた。

並木さん・・・敢えて”さん付け”だが、実は大学の3つ下、つまり自分が4年の時の1年であり、上下関係のキツかった母校では、天皇様と奴隷くらいの差があった関係。それでも、この初めての出会いから、その真摯な態度、プロ意識に感化され、尊敬してしまったので、さん付けをするようにした。

今日の予定はこれからボートでキス釣りを楽しんでもらい、夕方からは宴会となっていた。それだけキツイ日程をこなしているなら、もっとゆっくりしてもらったら良かったと後で思いはした。
空港から釣り場に向かう途中、本番の講習場所である十市の池があるので、ちょっと寄り道をした。実際に一目見てもらおうとお思ったのだが、事前には「水草の多いの池」という情報だけを伝えていた。実際畔に立ったときの並木さんと編集部の反応は、「・・・」だった。あとで聞くと、「こんなに凄いベジテーションとは」と思っていたようだ。

そこから半時間ほどで出船し、キス釣りが始まった。この年のキスは絶好調で、それこそ入れ食いになり、チャリコやイイダコも釣れ、楽しいモノになった。

釣りの後はもう一度少し移動し夜の宴会に突入。飛び入りで並木サンファンも来て、結構遅くまで盛り上がってしまった。

翌日、やや寝坊気味で十市の池近くの集合場所に行くと、すでに皆集まっていた。

池の北側から、まずは実釣開始。並木さんは釣りをしているのを見ながらアドバイスをくれる。

それでもなかなか魚は釣れない。梅雨が明けてしまって朝からの猛暑で、魚も口を使ってくれない。そんな中、チビバス1本とライギョが1本だけであった。そうしていると、なにやら並木さんと編集部が慌ただしい、自分も呼ばれ「これから住吉池ですか?隣の池を見に行ってきます。これ僕の携帯です。何かあったら連絡ください」といわれ、編集の携帯を渡された。その足で編集と並木さんは移動。自分たちは残されて十市の池で釣り続行も、魚は釣れなかった。1時間ほどして、並木さんは十市に戻り、皆を集めこう言った。「この1時間、僕は隣の池を見てきました。そしてあっちの方が良いと結論を出しました。ここで提案ですが、あっちの池に移動して釣りを続けるのはどうですか?」と言われ、反対する理由もなく、皆で住吉池に移動。皆が集合したところで、クラブ釣り大会の開始となった。この企画が実現したときに「並木杯釣り大会をしたい」と編集部に掛け合っていたのだ。並木さんも何か賞品を提供してくれるとのこと、皆気合いが入る。

程なくして、次々と魚が釣れだした。並木さんにも来た。そして1時間経ち、釣り大会は終了した。その後、皆を集めてセミナーが始まった。「皆さん、こちらに移動してそこそこ釣れたようですね。良かった。はじめ十市の池を見て、危機感を感じたんです。あの池はベジテーションが豊富で、大物も居ると聞いていたのですが、梅雨の明けた今の時期、良い魚は沖のブレイクにいる。ウイードの中にいるかもしれないが、それが大きすぎてかえって魚が散る。実際釣れたのも、ブレイクが一番岸に寄ったところだ。この池では満足のいく釣りは難しいと思っていたら、隣にもう一つ池があると聞いた。それで行ってみた。底をテキサスで探ると、ハードボトムがあった。底が堅いと言うことは、流れがあり、ブレイクもある。しかもそれが届く範囲に。それにホテイのシェードが絡めば釣れるのではと思ったわけです。案の定、こちらに移ってからポツポツと釣れ出した。ホッとしました。」この見切りの速さ、判断の的確さに一同ビックリした。結局優勝は澤谷になり、並木さんからサイン入りリールが贈られた。

そしてこの様子はBASSER誌に6ページにわたって掲載された。

並木さんと初めてお会いして、バスプロという仕事の難しさや、厳しさを学んだ。そしてその人柄に惚れ込んでしまった。以降、いろいろな場面で交流が続いている。

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